ビル内配線から音声ネットワーク、必要機器まで　PBX運用の技術的な仕組みを詳しく解説　後編

2025/04/01

前編では、PBXの運用に必要となるビル内配線の仕組みや、音声ネットワークの構築方法、PBX周辺のシステムについてご紹介しました。後編となる今回は、PBXの運用において必要となるシステムや機器について、Zoom Phoneでの実現方法も交えながら、詳しくご紹介します。

なお、前編の記事をまだご覧いただいていない方は、以下のリンクからぜひご覧ください。併せてお読みいただくことで、PBXの技術的な仕組みをより詳しく理解することができます。

1 PBX周辺システム①　基本的な機器
- 1.1 電話機
- 1.2 FAX機
2 PBX周辺システム②　応用機能を実現する機器
3 PBX周辺システム③　特定用途向け機器
4 まとめ

PBX周辺システム①　基本的な機器

はじめに、PBXの運用において基本的に必要となる機器からご紹介します。
以下では、各機器の概要に加えて、Zoom Phoneでの実現方法も含めて解説します。

電話機

電話端末はPBXによる音声ネットワークを構築・運用する上で必須となります。
電話機にはいくつかの種類があります。用途に応じて最適な機種を選定することが重要です。

種類	概要
アナログ電話機	アナログ電話回線を使用する電話機。電話局の交換機を介して音声を伝達する。
ビジネスフォン	オフィス環境で使用される多機能電話機。内線機能や転送機能などが充実している。
IP電話機	インターネットを利用して音声を伝達する電話機。VoIP技術を使用する。
ソフトフォン	PCやスマホ内にインストールされた専用アプリケーションを利用することで、IP電話機と同等の動作をする電話端末。

電話機の比較ポイントとしては、ディスプレイの大きさやカラー・モノクロの違い、電話帳検索機能、ラインキーの数などが挙げられます。

Zoom Phoneにおいては、Zoomアプリをソフトフォンとして利用可能な他、「Zoom Phone 認定ハードウェア」として指定されている電話機を利用できます。詳しくは以下のZoomサイトをご覧ください。 ※参考：Zoomサポート「Zoom 認定ハードウェア」

FAX機

FAXを利用する場合、FAX機能を備えた端末が必要です。FAX機能を備えた電話機や、プリンターなどと一体となったFAX複合機のほか、インターネットFAXを利用する場合はPCからの送受信もできます。

Zoom Phoneでは、FAX通信に関して、トラブルリスク軽減のため従来利用されてきたPSTN回線の利用を推奨いたします。また、インターネットFAX化してどこからでもFAX送受信可能にするという選択肢もあります。

PBX周辺システム②　応用機能を実現する機器

続いて、応用的な用途で利用できる機器をご紹介します。

IVR

IVR（Interactive Voice Response、音声応答装置）は、自動で音声案内を行うことで、電話での問い合わせ対応を効率化する仕組みです。

従来のPBXでは、IVR装置として物理的な外部機器を設置して音声での自動応答を実現していましたが、クラウドPBXではIVRもサービスとして利用可能です。Zoom Phoneでは、標準有償ライセンスでIVR機能が用意されており、1階層のシンプルなIVRだけでなく、複数の入力を受け付け、処理を分岐させていく複数階層の高度なIVRの実現もできます。

通話録音

通話録音は電話の会話を記録する機能であり、重要な情報を後から確認するほか、トラブル発生時の証跡として録音データを使用できます。

IVRと同様に、従来のPBX においては機器を導入するほか、PBX内に専用機器を実装することで実現していました。一方でZoom Phoneでは、有償ライセンスの標準機能として通話録音が提供されており、クラウド上で安全にデータが保存されます。

さらに、同時に文字起こしや通話内容の要約をすることも可能です。録音されたデータはクラウド上に保存され、ユーザーはZoomアプリ、またはZoomポータルから確認することができます。

管理者はクラウド上に保存された録音を簡単に検索、再生、ダウンロードすることができるため、効率的に運用できます。また、録音データの保持期間やアクセス制限も設定できるため、セキュリティ面でも安心です。

応答装置

応答装置は、時間外の着信時にガイダンスを自動的に流したり、指定の番号に自動転送したりする仕組みを持った機器です。

こちらもZoom Phoneでは有償ライセンスの標準機能で対応できます。Zoom Phoneのコールハンドリング設定では、営業日や営業時間を設定した上で、営業時間外にはボイスメールに転送したり、不在時に特定の電話番号に転送を行ったりといったことが可能です。

PBX周辺システム③　特定用途向け機器

最後に、特定用途で利用される機器についてもご紹介します。

受付用端末

オフィスや店舗にお客さまが訪れた際に、その方から来訪連絡を受けたい場合、オフィス・店舗の入り口に受付用端末を設置します。受付システムではタブレットや専用端末を使用するケースもありますが、電話機を受付用端末として代用することも可能です。この場合、呼び出し先の部門数が電話機端末に実装されたラインキーの数までとなる点に注意します。

Zoom PhoneではZoom Phone対応電話機、もしくはZoom Roomsにより、受付用端末の機能を実現することができます。

Zoom Roomsには「キオスクモード」と呼ばれる機能が用意されており、来客された方が画面に表示されたボタンを押すと、リモートで待機している受付担当者にZoomでコールがかかります。

この機能を利用すれば、遠隔で受付業務を実現することも可能です。

その他、名称検索機能を用意したい場合や、タッチパネル式の受付専用システムが必要な場合は、Acall社やRECEPTIONIST社の製品を利用することもできます。

回線収容装置（SBC）

回線収容装置（SBC：Session Border Controller）は、VoIPネットワークの境界において外部ネットワークと内部ネットワーク間での音声データのやり取りを保護し、安全に通信を行えるようにする機器です。

SBCは、PRI（Primary Rate Interface）やBRI（Basic Rate Interface）といったアナログ回線とIPネットワークの変換ゲートウェイ装置としての役割も果たします。

Zoom Phoneの導入において、既存の電話回線との接続を行う際に利用されます。

構内放送との連携

構内放送とは、電話機から工場や店舗、オフィス内などのスピーカーにてメッセージを放送することができる仕組みです。Zoom Phoneでは、ATAにてアナログ変換を行ったうえで、ページングアダプターと呼ばれる機器と接続を行うことで、実現可能です。

なお、Zoom Phoneには標準でオーディオインターコムと呼ばれる機能が備わっています。この機能を使うと、Zoom Phoneの電話機からスピーカーを通じて、周囲にいる人にメッセージを伝えることができます。

ドアホンとの連携

オフィスや店舗のドアホンとPBXを連携する場合にも、ATAとドアホンアダプターを利用することで、Zoom Phoneで実現可能です。電気錠の施錠・解錠まで電話機から対応する場合には、複雑な構成になるため、弊社までご相談ください。

PHS利用時の代替策

PHSとは、Personal Handy-phone Systemの略称であり、移動型の無線電話システムです。2023年に公衆サービスは終了し、現在では構内PHSとして一部で利用が継続されているものの、今後収束していくと予想されています。

現在、構内PHSを利用している場合、機器の寿命に合わせて新しい通信手段への移行が必要です。当社では、PHSからの移行先として、DECTフォンを推奨しています。DECT（Digital Enhanced Cordless Telecommunications）フォンは、PHSに代わる通信手段として、高い通信品質と安定性を提供します。 Zoom Phoneでも、DECT方式に準拠したZoom社の認定製品を利用することで、対応が可能です。