
オンプレミス/クラウドの違いは?PBXの運用業務について詳しく解説
2025/05/20
企業内の電話環境を構築するために必須となるPBXですが、PBXを運用していく上ではどのような業務が発生するのでしょうか?また、その作業内容は、オンプレミス・クラウドによりどのような違いがあるのでしょうか?
今回は、オンプレミスPBX・クラウドPBXのそれぞれについて、具体的な運用業務を詳しくご紹介します。これからPBXの導入や運用業務を担当される方におすすめの記事となっておりますので、ぜひご覧ください。
PBXの運用業務については、基本的に他のITシステムとあまり大きく変わりません。大きく分けて「システム維持管理」「予防保守」「障害対応」「システムの変更管理」といった業務から構成されます。
目次
オンプレミスPBXの運用業務
まずは、オンプレミスPBXの運用業務からご紹介していきます。
システム維持管理
システムの維持管理では、以下の運用業務を行います。
〇監視、稼働状態の管理
システムを安定稼働させることを目的とし、ダッシュボードなどで監視や稼働状態の管理を行います。
〇トラフィック管理
PBXリソースや回線に過不足がないかユーザーや回線の通話状況を把握していきます。PBXから出力されるレポートや回線キャリアが提供するレポートによりトラフィックの状況を把握し、分析したうえで必要に応じて改善策を講じます。
〇構成管理、設計ドキュメント管理
PBXの構成を管理し、設計に変更があった場合にはドキュメントを最新化します。
なお、電話通信業界においては構成管理図や設計ドキュメントではなく、「中継方式図」や「設備原簿」という呼び方をするケースもあります。
〇課金管理
通話料金の管理を行います。通信キャリアからは自社で利用した全ての通話料がまとまって請求されるため、その内訳を確認します。
企業にもよりますが、PBXのレポートより各内線電話がどれだけ外線発信しているかを把握し、その割合を基に各部門にコスト配賦をするケースもあります。
これらのシステム維持管理に関する業務は、一般的にPBXを導入した企業側で実施します。ただし、トラフィック管理や構成管理などはノウハウも必要となりますので、PBXベンダーなど外部に委託を行うケースもあります。
予防保守(計画作業)
予防保守に関しては、PBXの専門知識が必要なため外部に委託するケースが一般的です。具体的には、以下の運用業務が発生します。
〇計画停電対応
ビルや建物の計画停電に合わせて、システムの停止や起動を行います。
〇ソフトウェアの更新作業
PBXのソフトウェアのアップデートやバージョンアップ時に、自社のPBXに適用します。
〇定期点検
PBXの安定稼働のために、PBXに異常がないか定期的な点検を行います。
〇オーバーホール
システムを停止したうえでPBXを分解し、清掃します。PBXを長年利用すると、ホコリなどがたまり熱故障の原因となり、場合により電源がショートする可能性もあります。
PBX製品によっては、基板単位で中古パーツが存在するケースもあります。それらを利用して延命措置をするといったことも行われます。
障害対応(保守)
突発的な障害発生時には、障害対応を行います。
障害対応は以下の流れで行われます。
〇切り分け・ログ解析
まずは、障害の発生原因を究明するため、事象の再現確認やログなどを基に原因の切り分けを行います。
〇障害復旧作業
障害の原因が特定されたら、障害の原因となっている基板の交換を行ったり、ソフトウェアの改修作業を行います。
PBXを構成する基板のことをパッケージと呼びますが、一般的にパーツの交換においてはパッケージ単位で実施します。
システム変更管理
最後に、システムの変更管理として発生する作業についてご紹介します。PBXの運用管理においては、比較的作業ボリュームが大きいところといえるでしょう。
〇ユーザーの追加、変更、削除
電話を利用するユーザーの追加や変更、削除を行います。これらの作業はユーザー企業側で実施するケースもありますが、オンプレミスPBXの場合はベンダーに委託されている企業も多いです。
〇各機能の追加、変更、削除
機能の追加や変更、削除については、ベンダー側で実施します。
よくあるのが、月次などの定期点検でベンダーが企業を訪問した際、軽微な変更作業であれば併せて実施するというケースです。
〇電話配線工事
システム変更管理の中でも、特に大きなウェイトを占めるのが電話配線工事です。
オンプレミスPBXの場合、企業の組織変更やレイアウト変更時に電話機の設置場所や配線の変更が必要となります。
クラウドPBXの運用業務
続いて、クラウドPBXの運用業務について、オンプレミスPBXの場合と比較しながらご紹介します。
システム維持管理
システムの維持管理については、基本的にオンプレミスPBXのケースと大きくは変わりません。
〇監視、稼働状態の管理
オンプレミスPBXと同様に、ダッシュボードなどにてアラートやアラーム、システム稼働状態の確認を行います。
〇トラフィック管理
同様にトラフィック管理も必要です。利用するクラウドPBXサービスによっては、トラフィック管理が自動化されており、定期的なレポートも不要となっているものもあります。
なお、クラウドPBXであるZoom Phoneの場合、外線の通話チャネルの制限が少ないため、トラフィック管理が簡素化できます。
〇課金管理
近年では細かく部門別に電話料金を配賦するケースは減っており、会社単位で電話料金を管理している企業も増えています。また、クラウドPBXでは通話料が定額となっているプランも増えており、そもそも通話料の管理が不要というケースも多くなっています。前述したZoom Phoneでも、定額通話プランを提供しています。
特にクラウドPBXの場合、課金管理を行うケースは減少しつつある状況です。
予防保守(計画作業)
予防保守は、クラウドPBXを採用することで大きく負担を減らすことができる領域です。
〇計画停電対応
クラウドPBXではビルや建物内に物理的なPBXを設置しないため、原則として不要となります。ただし、SBC(Session Border Controller)としてPBXと通信事業者のIPネットワークと相互接続するゲートウェイを設置する場合は、計画停電への対応が必要です。
〇ソフトウェアの更新作業
原則として不要ですが、同様にSBCを設置する場合は必要となります。
〇定期点検・オーバーホール
定期点検やオーバーホールについても、物理的なPBXを設置しないため不要となります。
障害対応(保守)
同様に、障害対応についてもクラウドPBXを採用することで負荷を減らすことができます。
〇切り分け・ログ解析
切り分け作業については、クラウドPBXにより対象範囲を減らすことはできますが、完全になくすことはできません。ログなどの確認により、クラウドPBX側に障害の原因があるのか、他の要素に原因があるのかといった切り分け作業が必要です。
〇障害復旧作業
クラウドPBXの採用によりPBX自体の障害復旧作業は不要となります。
ただし、SBCを設置している場合はやはり障害復旧作業が発生します。
システム変更管理
システム変更管理もまた、クラウドPBXにより大きく負担を減らせます。
〇ユーザーの追加、変更、削除
多くのクラウドPBX製品では、システム管理画面上でユーザーの追加や変更、削除が可能となっており、企業側の管理者で対応しやすいといえるでしょう。
〇各機能の追加、変更、削除
クラウドPBXでは、機能が自動的にアップデートされていくため、PBXのアップデート作業は必要なく、クライアントアプリのアップデートのみ行えば自然と最新の機能を利用できます。
〇電話配線工事
クラウドPBXの導入により電話回線をIP化することで、LAN配線工事をネットワーク管理と統合できます。よって、組織変更などにおいては電話専用で工事する必要はなくなります。
構成管理図(中継方式図)の例
以下では、PBXの構成管理図(中継方式図)についてご紹介します。オンプレミスPBXの運用業務にあたっては、構成管理図により構成管理を行います。
構成管理図は、各要素の枠内に実装されている回路数と、そのうち利用している回路数とをxx/○○のような形で表記します。これにより、各回路の空き容量の管理を行います。
(参考)PBXの構成管理に用いる専門用語
PBXの運用を行う上では、PBXを構成する各要素について理解しておくことも大切です。
一例としては以下のとおりです。
〇COT
COT(Central Office Trunk)は、一般的なアナログ回線、特にNTT東日本やNTT西日本のアナログ回線を収容するための回路です。
〇PRIT・BRIT
PRIT(Primary Rate Interface Trunk)とBRIT(Basic Rate Interface Trunk)は、ISDN(Integrated Services Digital Network)のサービスを収容するインターフェースです。BRITはINSネット1500サービス、BRITはINSネット64サービスなどに利用されます。
〇 TTC2M
TTC2M(2メガビットデジタル伝送路)は、2Mbpsの速度で通信できる専用線のインターフェースです。古くから利用されており、大手企業ではいまだに使用されていることがあります。
それぞれの要素について詳しくは、以下の記事でも解説を行っております。ぜひ併せてご覧ください。
※関連記事:ビル内配線から音声ネットワーク、必要機器まで PBX運用の技術的な仕組みを詳しく解説 前編
まとめ
今回は、オンプレミスPBX・クラウドPBXのそれぞれについて、具体的な運用業務について詳しくご紹介いたしました。
クラウドPBXでは、オンプレミスPBXと比較して自社で実施しなければならない運用業務を削減することができます。これから自社の拠点に電話環境を構築したい場合や、オンプレミスPBXの更改を検討したい場合は、クラウドPBXの採用を検討してみてはいかがでしょうか。
当社には、クラウドPBXはもちろんのこと、オンプレミスPBXの運用やオンプレミスPBXからクラウドPBXへの移行方法など、幅広い知識を持ったプロフェッショナルが在籍しております。
Zoom PhoneなどのクラウドPBXの新規採用やオンプレミスPBXからの移行をご検討中の方は、お気軽に当社双日テックイノベーションまでご相談ください。